すまいる餃子
ぷん太郎が子どものころ、いちばんの楽しみは、おじさんの焼いてくれる餃子。
ジュ〜ッと焼ける音、立ちのぼる香り、ほおばったときのしあわせ。
それは、ぷん太郎にとって宝物のような日々でした。
「ぼくも、こんな餃子をつくれるようになりたいなぁ」
でも、ぷん太郎が大人になるころ、おじさんは突然、天国へと旅立ってしまいます。
残されたレシピは、古い餃子語で書かれたもの。ぷん太郎には読めませんでした。
図書館に通い、学者先生に教わって、なんとか現代語に訳したけれど——
「……ちがう。あの味じゃない。」
何度つくっても届かない“しあわせの味”。ぷん太郎の心は、いつもプンプンしていました。
そんなある日、にこえという女性と出会います。やさしくて、まっすぐで、そっと寄りそってくれる人。
ぷん太郎の餃子を食べたにこえが、ふとたずねました。
「ぷん太郎さん、餃子を作るとき……楽しい気持ち、ちゃんとある?」
そのひとことに、ぷん太郎はハッとしました。
子どものころのワクワクした気持ちを、いつの間にか忘れていたのです。
その日、ぷん太郎は鼻歌まじりに、餃子を包みました。
皮の手ざわり、リズムのある手つき、ふわっと軽い心。
焼きあがった餃子をひと口食べた瞬間——
「……これだ!」
おじさんの味が、よみがえったのです。
ぷん太郎は、できたての餃子をにこえに差し出しました。
にこえはひと口食べて、ふわっと笑って言いました。
「……こんな餃子、はじめて。」
そしてそっと、こう続けました。
「これからも、いっしょに餃子を作って、食べたいな。」
ぷん太郎は、ちょっと照れながらうなずきました。
——こうして、ぷん太郎とにこえは結婚して、仲良く暮らすことにしたのです。
おいしい餃子と、ふたりの笑顔があれば、しあわせは、いつでもそこにあるのです。
しくは、やさしさにあふれた餃子の女の子。誰かが悲しそうにしていると、すぐにポロリと涙がこぼれてしまいます。
ある夜、しくは町の餃子屋さんの前で立ち止まりました。おなかをすかせた子どもたちが、買えずに帰っていくのを見たのです。
「おいしい餃子、おなかいっぱい食べたかったよね……」
その涙が、地面にポトリ。ふしぎな気配が、もくもくと立ちのぼりました。
しくの涙から生まれたのは、おなかをすかせた妖精・ジャオ君!
「ぎょうざ食べたい〜〜っ!たらふく食べたーい!!」
それからというもの、ジャオ君は見つけた餃子をこっそり集めて、街中にある自販機にこっそり隠すようになったのです。
ぷん太郎:「ぎょ、ぎょぎょっ!? 餃子が見つからんぞーー!」
???:「僕に任せて!」
ぷん太郎の“餃子を守りたい”気持ちから生まれたのが、「ぎょざ坊」!
こうして元気な弟・るんといっしょに、餃子パトロールがはじまりました。
「また隠してる〜〜!?」「見つけたぞ〜〜っ!」
自販機のまわりは、今日も大騒ぎです!
ある晩、ついにジャオ君を追いつめた、るんとぎょざ坊。
「まて〜〜っ!」「ぎょうざ、返して〜!」
「いやだも~ん!」と、ジャオ君は杖をふりかざして——ニンニクビーム、発射!!
ピカーーーン!
ぷん太郎の秘伝ドロダレに命中して、香ばしいにおいがもわ〜っと立ちこめます。
「……これは……新しい味だ!!」
「ジャオ君も、食べてみなよ。」
もぐもぐ……
「……おいしい。」
しくが隣にすわって、にっこりほほえみました。「いっしょに食べると、あったかいよね。」
それからというもの、ジャオ君はタレづくりを手伝うようになりました。
でもときどき、こっそりつまみぐい…
ぎょざ坊とるん:「こら〜〜っ!またか〜〜っ!!」
どこに隠したかな?
笑顔になるこだわりたっぷり!
すまいる一家を見に行く